チベットの先生
2年ぐらい前かな。
ネパールに行きヒマラヤの山々を登った後、チベット仏教に惹かれて
帰って来てから中沢新一さんの本を読んだり、チベット死者の書を読んだりしていた。

「チベットの先生」
中沢新一

本の中から1部抜粋
エピローグ


長いこと、私の話につきあってくれて、どうもごくろうさま。
最後にひとつ詩がわいた。
あなたとこれを読むことになる人たちへの
年老いたラマからの忠告の言葉だ。

たわいもないこの世の人々を喜ばせるために
無意味なおしゃべりにふけったり、おべっかいを使ってはいけません
それを強く戒めるラマの教えにしたがって
心を深く内面に向けていかなくてはなりません
あなた方は学問にも優れ勇気もある人々です
心の喜びは他人からもたらされるのではないことを知って
この世のことを遠く離れて瞑想の部屋で
じっと心の本性を見つめてください
ふくらんだエゴと無知に汚された心を浄化してください
この人生で得た財産や名声にすがっていても
死はいつ訪れてくるかわからず
そのときには閻魔の王をおだてたり
賄賂でごまかすことなどできません

自分が得たものをより高い世界に向かってささげようともせず
苦しんでいるものたちに与えることもしないでいると
みずからを楽しむこともできないままに
一生に貯めた財産などは、一瞬の間に消えていくのです
食べるものも着るものも話すことも
いつも必要なものだけにとどめて
この世をあまねく照らすダルマの海に心を集め
それを喜びとして今生と来生を生きることができますようにと
私は心からお祈りしています
すぐに衰え消えていく財産や名声などから離れて
満ちていく月のように喜びが常に殖え増し
輝き燃え上がる幸福に、全世界が
夜もなく昼もなく包まれてあることを、お祈りいたします



あとがきにて

かつてこの地球上には、人間が魂の成長ということだけを人生の重大事と考えて
自分の全生命をささげて探究をおこなっていた世界があったのです。
そのことをよく憶えている人たちがいなくなってしまう前に、
ささやかながらもこういう記録を残すことができたことに、私は言い知れぬ喜びを感じています。

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