夢の話

夢をみた

私は帰り着いたところで、屋上に止まっていたある一家の車に乗せてもらう

その車には父、母、娘2人が乗っていた。
「さあ、帰りましょう。今日はごちそうよ。
人間が届いたの。」
と前の座席に乗った母親は言った。

「人間の脳は美味しいんだ。今、解凍中だから帰り着く頃には食べ頃だよ。」

と車を運転している父親は言った。
私は訳が分からず、娘達を見た。

「彼を助けて」
と姉の方が私に目で訴えてきた。
彼女の目に映ったのは、解凍されていく青年の姿だった。
青年はシヴァ神によく似ていた。
長い黒髪はつややかで
肌は浅黒く、まるでゴムで作られたかのようにつるっとした肌をしていた。
眠っている彼は人形のようだった。

一家が家に着くと、彼は長い眠りから目覚めていた。
その青年は1番上の長女と同じくらに見えた。
二人は気が合うのか、楽しそうに話をしていた。

私は両親に
「本当に食べてしまうのですか?あんなに楽しそうに笑っている彼を。」
そう言うと両親はうつむいてしまった。

しばらくして、私の所にはがきが届いた。
あの少女と青年は結婚したようだ。
家に届いたいくつかのはがきの中で、2人はとても幸せそうだった。

彼は話すことは出来ても、文字を読むこと、書くことが出来ないのだと
彼女のはがきには書いてあった。
でも今彼は立派に工場で働いていて、とても幸せだと。

月日が流れ、私はまたあの屋上へ帰り着いた。
屋上には彼女がいた。
彼女は少女から大人の女性になっていた。
そして私はなぜか男になっていた。

「彼、死んでしまったの」
そう言って彼女はおいおい泣き出した。

彼は自ら死を選んだのだと。
彼女のそばには死んだ彼が横たわり
とても安らかで幸せそうな顔をしていた。
彼だけは時が止まっていたかのように、美しい青年のままだった。

彼は最後に故郷に残され、
刑務所に閉じ込められている祖母に手紙を書いていた。
記憶を無くしていたと思っていた
彼は故郷のこと、残された祖母のことをずっと忘れてはいなかった。

なぜ自分は読み書きが出来ないのか。
「そのためだけ」に育てられた仲間達のことや
彼自身も幼い頃からそのように育てられてきたこと
どんなに幸せな日々でも埋まることのない
空っぽな闇が常に彼の中にあった。

彼女はずっとおいおい泣いていた。
私は彼女を抱きしめ、背中をさすってあげた。
「無常だね。この世は無常」

空虚な空は真っ青で、
柔らかな風が肌にあたり、
心地のいい晴れた日だった。

朝目が覚めると、私はどこにいるのかわからなくなった
薄らいでいた記憶が、繋がるまでに時間が必要だった

そうか。私は日本にいて、ここは「私」の部屋だ
手を動かし、足を動かし、
何ともいえない不思議な感覚をあじわう

夢で見たあの「私」も
今こうしてここいる「私」も
すべて私だ

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