太陽とつき

これは遠い昔

まだ地上には

太陽の光しか届かなかった頃のお話です

久しぶりに雨が降ってきました

空が泣き出しそうだったので

そろそろかもしれないねと木々たちは言っています

そのあと

つかの間の雨はあっと言う間に過ぎ去り

空は晴れわたりました。

何時もの太陽が顔を出しています

そんな晴れた日のことです

太陽は燦々と照り

あたりを照らし続けています

太陽のあたたかさを

初めは喜んでいた花々も

太陽の照りつけるような光に

嫌気がさしてきました

花々はだんだん唄をうたわなくなってしまいました

太陽は花々が歌ってくれるのがうれしくて

うれしくて

僕がもっと光らないから花達は歌ってくれないんだ

そういって光を強めていきました

すると今度は花々はだんだんと下を向き始めました

光から顔をそらし地面ばかりをみていました

緑だった葉っぱはどんどん白っぽくなっていき

湖の水も減っていきました

太陽はもっと完璧な光が必要なんだと思い

ますます光を強めていきます

あんなに瑞々しく美しかった花々はとうとう枯れてしまいました

花の最後の歌声が聞こえなくなったとき

太陽はさみしくて

さみしくて

おいおい泣き出しました

するとどうでしょう

風は月を運んできました

「太陽さん、そんなに泣かないで

ほら月を連れてきたよ」

太陽はその時はじめて月を見ました

始めて見た月はまん丸としていました

そしてやさしい光を発していました

「月?」

太陽がそうつぶやくと

風は言いました

「そうだよ。

太陽さんは少々頑張りすぎたんだ。

貴方の光は花には強すぎたようだ

これからは太陽さんと月で交互に照らしていくといいよ

そして私は時折雲を連れてくるから

そのときには太陽さんは隠れてしまうけれど

時には静かに隠れている事も大切なんだ

いつもいつも光はいらないんだ」

そう風に言われて太陽は

ほっとしました。

いつも自ら光り見られていることに

疲れてしまったのです

毎日毎日明るく照らし続けていくことに

嫌気がさしていました

それからというもの

地球には太陽と月が交互に現れるようになりました

枯れていた花々は少しずつ

色を取り戻していきました

月明かりがまんまるに輝くとき

花たちは

それはそれは美しい歌声で唄を歌います

太陽は雲の中でその歌声を聞いていました

私が顔を出したときには

もっともっと綺麗な歌声で歌って

欲しいと思いました

そうして太陽は以前よりも

更に光を強めていきました

強まった光の加減がわからなくなり

とうとう

太陽は自ら焦げて消えてしまいました

太陽がいなくなった地上では

月は時折欠けたり増えたりしながら

優しい光を暗くなった地球に注いでいきました

遠い遠い昔のお話

おわり

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